第22話 臼太鼓の誕生

第6章 太鼓を作る

第22話 臼太鼓の誕生
 
ということで,太鼓は非常に高額なのだ。
安易に買えるものではないです。
 
太鼓のチームを作って2年が過ぎた頃,
1尺4寸の長胴太鼓が2台と締太鼓が1台,これがチームの全戦力,
いかんとも淋しい・・・
 
そんな時に目を付けたのが
実家の倉庫の片隅に放置してあった餅つきの臼でした。
臼としての現役を退いてからもう20年になる古木。
材質は太鼓と同じケヤキ,
これを削り直したら太鼓にならないかなあ・・・
おりしも親父は邪魔だから臼を捨てるという。
かくして,臼との格闘が始まったのです。
 
太鼓の胴に比べて臼の縁は厚い。
まずチェーンソーで大雑把な形にぶった切る・・・
と思ったがさっぱり切れない,
刃が古くて切れないのだ。
刃を買い換えてようやくの思いで切断。
 
次ぎに底を抜かなければならない。
ホームセンターで特大のドリルの刃を買ってきて,
くり抜く円周上に穴を開けていく,しかも上下からである。
ちょっとでもずれると底は抜けない・・・
苦労の末,底が抜けた時には我ながら感動!
 
で,それなりに太鼓の形になった訳ですが,
重さを量ってみたら40kg!重すぎて一人で運べない・・・
ってわけで,大減量作戦の開始。
内側はノミで,外側は電気カンナで削る。
「ケヤキは古いほど硬くなる!」なんて知らなかった。
ノミで渾身の力で削っても1mmくらいしか削れず,
ノミ1丁は完全におシャカ。
電気カンナからは火花が飛んだ。
作業場は削りカスで一杯,
悪戦苦闘の1ヶ月,ようやくの思いで太鼓屋に持ち込んだ。
 
太鼓屋さん曰く
「いろんなお客さんが来るが,臼を持ち込んだのはお客さんが初めてだ。
でも,太鼓の胴としては最高だな。」
木は乾燥するに従って少しずつ縮んでいく。
だからどうしても皮が緩む。
その点,この臼は完全に枯れきっているから
これ以上縮むことはないということです。
 
たいそう立派な皮と飾り金を付けてくれた太鼓屋のおやじさん,
もう他界されてしまったが,
最高の太鼓に仕上げてくれて「ありがとう」・・・合掌・・・

(2007年2月26日)
               →第23話 登場!ちび助太鼓